「マッチ箱の脳(AI)」

マッチ箱の脳(AI)―使える人工知能のお話

マッチ箱の脳(AI)―使える人工知能のお話

最近ちょっと人工知能に興味があって、本を探していたのですが、その中で一番読みやすそうだったこの「マッチ箱の脳(AI)」を読みました。この本には、数式やプログラムはほとんど出てきません。人工知能にはたくさんの種類があるそうなのですが、その中から有名なAIをいくつか紹介していて、その内の3つをマッチ箱とマッチを使って仕組みを説明しています。タイトルの「マッチ箱」はそういう意味で付けられています。


代表的な3つのAIは「遺伝的アルゴリズム(Genetic Algorithm=GA)」、「ニューラルネットワーク(Neural Network=NN)」、「エキスパートシステム」で、それぞれ得意分野が異なります。「GA」は、たくさんある組み合わせの中から、最も良いものを見つけるのが得意。「NN」は、サンプルから学んで行くことで初めての問題を推測することが得意。「エキスパートシステム」は、正確な答えをだすことができるが、専門家の知識を必要とし、また、前の2つのAIと違い自分で学習しない。


どれも分かりにくそうですが、読みやすい文章と具体的な例のおかげで、割と簡単に概要を理解することができました。特に「エキスパートシステム」は、とても簡単な仕組みで、プログラムを覚えたての時に作ったことがある人もいるのではないか?とも思えるものでした。ただ、延々と使用例が示されている箇所では、プログラムが出てこないことが逆に分かりにくくも感じました。


どれも興味深かったのですが、僕がいちばんおもしろいと思ったのは「NN」です。このAIはシナプスでつながれている脳細胞をモデルとしているのですが、学習結果から知らない問題を推測して答えを出すことはできても、論理的になぜそれが正しいのかを説明できないのです。仕組みを考えると確かにそうで、とても不思議でおもしろい。


それから、AIは答えをだすための仕組みであって、どのような入力をどのような数字で学ばせるか、どのような数値をどのような出力として表すか、は結局人間が決めることであり、また、そこがAIのクオリティに大きく影響します。コンピューターは恐ろしスピードで正確に計算をするが、人間の作ったロジックに完全に依存するというのと似ていますね。もっと言えば、ドラゴンボールに出てくる神龍も、神様ができること以上の願いは叶えられないというのにも似てる。


そして、この本は最後には現時点のAIの限界について触れています。AIは考えて答えを出すことに専念し過ぎて複雑になっている。人間も本当は複雑な思考をしているのではなくて、環境が複雑ゆえに複雑な行動をしているのではないか。であれば、考えてから行動するのではなく、行動してから考えればいいのではないか、と。なんだかアウトプット思考と似ていますね。


次は人工知能概論―コンピュータ知能からWeb知能まで恋するプログラム―Rubyでつくる人工無脳 はじめてのAIプログラミング―C言語で作る人工知能と人工無能などを読んでみようかなと思います。